*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
この声が届いたかどうかはわからなかった。

でも涙をこらえて発することのできるギリギリの大きさの声でわたしはシィ君に言った。


喉が痛い……。

泣くのを我慢するって喉の奥が痛いんだ。


わたしは机に置いていた鞄を手に持つと逃げるように部屋を出た。

シィ君の顔を見もせずに。



ごめんなさい。

ごめんなさい。


どうしよう……。


足がもつれる。

まるで夢の中で走っているみたい。

早くここから去ってしまいたいのに、体がついていかない。



――ドンッ

誰かとぶつかった拍子に涙がこぼれた。


「ごめんなさっ……」


泣き顔を見せないようにうつむいたまま、また走り出した。


夏休み最後の日。


最悪のバースディ。



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