*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「おい! シィ! おーい!」

「へ?」


気づくと、目の前で田中が仁王立ちしている。

やべっ。

またぼんやりしていたらしい。


「スプレー切れてしまってん。オレ、購買で買ってくるわ」


ため息混じりにそう言うと、田中は校舎へと戻っていった。



一人残されたオレはすることもなく(つか、もともと何もやってないけど)手持ち無沙汰になりあたりを見渡す。


ふと広場の隅に、ボールが落ちているのに気付いた。

なんとなくそれを取りに行って、その場でリフティングを始めた。


――ポーン……ポーン……ポーン……


ボールは規則正しく飛び跳ねて、オレの膝に戻ってくる。

それをまた蹴り上げる。


こうしていると、ボールに集中できた。

さっきからのモヤモヤを忘れることができた。



だけど、ふと正門に目をやった瞬間……

オレの動きは止まった。
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