*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
ケンジの声にハッと我に返った。

突然の問いかけに、軽いパニックを起こす。


アドリブ弱っ……。


「高校デビューやん。な?」


サトシが理由を知ってるくせに、わざとそう言ってからかってきた。


いつまでも答えられずにいると、

「――って、マジ?」

ケンジは目を丸くして大袈裟に反応する。



「ちゃうよ。コンタクト屋のお姉さんが、めっちゃカワイかったから」


適当な思い付きをポツリと呟くオレにみんなが吹き出した。


「なるほど。それは買うな。オレでもコンタクトにする」


腕を組んでうんうんと頷くケンジに、「なんでやねん、お前、視力1.5やろ」ってみんなで突っ込んだ。



本心がバレなかったことに、ホッとしていた。


オレがコンタクトに変えたほんとの理由は……。

あの日、ユウが何気なく言ったセリフのせいだ。


『ナオのメガネかけてない姿って久しぶりやなぁ……。その方がいいんちゃう? かっこイイやん』


単純だと笑うやつは、笑え。

こんなことしても、彼女がオレを見てくれるわけじゃないのにな。



「あ、そや……」


サトシがふいにごそごそとポケットを探りだした。

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