*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「家にいたくないって……どういうこと?」


その意外な発言にわたしは反応した。

逆に彼女のことが急に心配になった。



アカネちゃんは鞄の中から紙切れを一枚出してきた。




「これって……」


それは、夏休み明けに行われた校内実力テストの結果だった。


「見ていいの?」そう尋ねると、アカネちゃんは無言で頷いた。


わたしはその紙に視線を落とした。


43番……。

それがアカネちゃんの順位だった。

1学年の人数は350人ぐらいだから、それでも上位に入る順位なんだけど……。

アカネちゃんは入学以来ずっと2番だったから、この順位は彼女にしてみれば不本意な結果だったと思う。


「これ見てさー、親がブチ切れてめちゃくちゃ怒られてん。携帯まで取り上げられそうになったもん。ありえへんって」


「うん……。でも……何かあったん?」


アカネちゃんは伸ばしていた足を折り曲げると、それを両手で抱え込んで座りなおした。


「なんかさー。もう勉強すんのがバカらしくなってきてん」


声は明るいけど、顔がひきつっている。

今にも泣き出しそうだ。


わたしは黙って次の言葉を待つ。


長い長い沈黙の後、声を震わせて、それでも泣くのを必死にこらえながらアカネちゃんは口を開いた。



「ちぃちゃん……。わたしなぁ……




失恋した……」


< 182 / 417 >

この作品をシェア

pagetop