*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「はいこれ」


差し出したのはピンク色の小さな紙切れ。


「“香椎王子”に、うちのクラスの女子が渡してって」


「王子ぃ?」


オレは眉をしかめて叫んだ。


「うん。うちのクラスの女の子ら、お前のこと“王子”とか呼んでるみたいやで」


「げっ……やめてくれ」


言っとくけど、オレは全然王子様キャラなんかじゃない。

どういうわけか、

『いつも落ち着いた雰囲気の大人っぽいシィ君』

って、中学の頃から女子の間では言われてたらしいけど……。

単に背が高いからそう見えるだけだろう。


王子っていうか、どちらかと言えば優等生キャラなんじゃないかな。

勉強もスポーツもそれなりにできる方だから。

もちろん実際にはそんな良いもんじゃない。

ほんとのオレはバカなことも言うし、頭ん中は普通にエロいし、自分でもガキだということは、充分わかっている。

だけどなんとなくできてしまったイメージってのがあって、オレは教師やあまり親しくない人の前では、それを演じなきゃいけないって思ってるんだ。
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