*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
――プチッ……プチッ……プチッ……


さっきから、わたしの空のお弁当箱には、ある物がある人によって入れられていく。


――プチッ……プチッ……プチッ……


「あ……あのさぁ……。これ、何かの罰ゲーム? てゆか、嫌がらせ?」


「ちゃうよ。『これ食べて大っきなってね』っていうオレの愛情♪」


さらにある物を乗せようとしたその手をわたしは掴んだ。


「もぉ! やめてよ―――!」


「じゃ、いい」


プィと顔を背けたその人の横顔をじっと見つめる。

スネたふりしてもダメ。

そんなの、わたしだっていらないもん。


このスネたふりしてる人物は……シィ君だ。


さっきからレーズンパンのレーズンを指でほじっては、ご丁寧にもそれをわたしのお弁当箱に入れていたのだ。


「レーズンが嫌いなんやったら、レーズンパンなんか買わなきゃいいのに……」


ボソッとつぶやきながら過去の記憶がよみがえる。

あれ?

前にもこんなことがあったような。

たしかあの時はグリーンピースだったよねぇ……。


なんてことを考えるわたしをよそに、シィ君は相変わらずスネたフリしながら話す。


「レーズンは嫌いやけど、レーズンパンは好きやねん」


「はぁ? 意味わかりませんけどぉー?」

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