*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
北から吹く風が、凍りそうなほどの冷たい空気を送り込んでくる。

そんな季節が訪れていた。


その日、わたしとユカリちゃんは放課後の廊下に出て話し込んでいた。


「雪……降らへんかなぁ……?」


ユカリちゃんが空を見上げて、窓から手をかざした。


「あー。めっちゃ寒いー! こんだけ寒いんやったら、いっそのこと降って欲しいわー!」


誰に向かって言っているのか、窓の外に向かって叫ぶユカリちゃん。


「ほんまやなぁ……。雪って降りそうで降らへんもんなぁ……」

って、わたしも呟く。


そうなのだ。

わたし達が住む街では、雪が降るのはほんとうに珍しい。

年に5回降れば多いほうだ。


そのせいか、わたし達は雪が降るとほんのちょっとテンションが上がる。

ここまで寒いんだから、いっそのこと降ってくれた方が潔い気がする。


あー……それにしても寒いよぉ。


「寒いー。ユカリちゃん、もう窓閉めてー!」


そうお願いしてみるものの。

わたしの声が耳に入らないのか、窓はいっこうに閉まる気配がない。


「ユカリちゃん……?」


不思議に思って横を見ると、

ユカリちゃんは窓枠に手をかけたまま動きを止めていた。


窓の外の一点をじぃっと見つめて……。

わたしもその視線の先を追う。

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