*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「ちょっと気のある素振りしたら、すぐにこっち向いてくれた」



情けないけど、わたしには言葉を発することができなかった。


浮気のあてつけ……彼氏の友達と……気のある素振り?


ユカリちゃんのセリフが頭をぐるぐると巡る。

ひょっとして、彼氏の友達っていうのが、さっきの男の子……?


「あの人、わたしとのこと彼氏に喋ったみたいで、その事全部バレてん。それで、彼氏から昨日振られた」


まだ何も言えずにいるわたしをよそに、ユカリちゃんは相変わらず遠くをぼんやり見つめている。


「別に……本気じゃなかった。でも、あの人、マジになってしまったみたいで……。彼氏と別れたこと知って、昨日何度もメールと電話があってん」


「うん……」


「正直、ウザくて……。それで全部拒否っててんけど、最後に一通だけメール送ってん。
『一度寝たぐらいで彼氏気取りせんといて』って」


全てを話したとたん、ずっと我慢していたのかユカリちゃんの目から涙が溢れた。


「……わたしって……ほんま……最低っ。……何やってるんやろ」


「ユカリちゃん……」


わたしはどうすればいいかわからず、ユカリちゃんの肩にそっと手を回した。



「ぐすっ……ちぃちゃん、ありがとう。こんなわたしにいつも優しくしてくれて……。わたし、ずっとちぃちゃんに憧れてた。初めて会った時からずっと……」


「え……?」


思いがけない言葉に驚いた。


「ちぃちゃんは、いつもまっすぐで……。一途で……。純粋で……。わたしにもこんな頃あったはずやのに……。いつのまに、自分はこんなに汚れてしまったんやろうって……。こんな自分が大嫌いやった。もしも、生まれ変われるなら、ちぃちゃんになりたい。ちぃちゃんみたいな子に……。うぅ……」

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