*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
ユカリちゃんはもう言葉にならないほど泣きじゃくってしまった。


わたしも目の縁に涙がたまって、目の前の景色が歪んで見えた。


違うよ……。


ユカリちゃん……。


ずっと憧れてたのは、わたしの方。


薔薇の花みたいにキレイで、彼女がいるだけでその場がパァって華やぐ。

太陽みたいに笑う笑顔に誰もが魅了されるんだ。

ユカリちゃんは前に踏み出す勇気のないわたしを、何度も励ましてくれたよ。


そして何より……ユカリちゃんはシィ君に想われてる。


ほんとは……ずっと羨ましかった。

ユカリちゃんになりたいって何度もそう思ったよ。



「ごめんな……ちぃちゃん。今日はもう帰るわ」


ユカリちゃんはそう言ってハンカチで涙を拭うと、歩き始めた。


その後姿を見つめながら

今すぐ追いかけて、慰めてあげたいって心から思った。



だけど……


きっと今それができるのは……


わたしじゃない。




わたしは今来た道を戻り、廊下を走りだした。
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