*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
ある教室の前で足を止めた。

シィ君のクラスだ。


中を覗き込んでも、彼の姿はなかった。


シィ君……どこにいるんだろう。


そうだ、電話……。


携帯を取り出して電話をかけてみる。


お願い……出て。


でもいつまでたってもシィ君は出てくれない。



わたしは携帯を閉じるとまた走りだした。




廊下を曲がった時、誰かとぶつかりそうになった。


「うおっ」

「ごめんなさい」


顔も見ずに走り去ろうとするわたしに、その人は声をかけた。


「ちぃちゃん!」


振り返るとサトシ君が立っていた。


「どうしたん? えらい急いでるみたいやけど」


「シィ君知らない? 教室にもおらんねん」


「部活行くって言ってたで。このクソ寒いのに。部室に向かってる途中ちゃう?」


「ありがと!」


わたしはサトシ君の言葉を聞き終えるなり、また走り出した。
< 233 / 417 >

この作品をシェア

pagetop