*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
多分……何も考えてなかったんだろうな。

観覧車の中でわたしと向かい合って座る彼を見ながらそう思った。


おそらく、乗ってから気付いたのだろう。

今になって『しまった……』って感じのバツ悪そうな顔してる。


ぷぷ。


なーんか、この人ってほんとわかんない。

子供なのか大人なのか。

天然なのか計算なのか。

でも、目の前で『やばいなぁ』って感じで、ちょっと焦っている姿はなんだか可愛い。



「くすっ」


「なんやねん?」


照れたような顔でわたしを睨む。


「べっつにー♪」


わざとからかうようにそう言うと、拗ねた子供みたいにそっぽを向いてしまった。



ゴンドラがゆっくりと高度を上げて行くその時

「なぁ……もう食堂で飯食わへんの?」

シィ君からふいに質問された。



「うん……。アカネちゃんと一緒にご飯食べてるから」


3年生になってから、わたしがあのメンバーと食堂で過ごすことはなくなった。

アカネちゃんと……っていう言い訳は、それを断るには都合の良い理由になっていた。

シィ君はそれ以上何も聞いてこなかった。
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