*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「兄貴とヤったかどうかなんて、そんなに気になるかねー?」


サトシが呆れ顔を向ける。


「もう過去のことやろ? 好きな女の過去をいちいち気にしてどうすんねん」


もっともな意見だ。


オレってやつは、ほんとちっぽけな男だ。

最近、つくづくそう思うよ。


ヤったかどうか。

もしもヤってるなら、そんな事実はできれば知りたくない。

けど、ヤっていないなら、その事を確認したい。

知りたいような知りたくないような、わけのわからない感情がオレを悩ませていた。


こんなことにこだわるなんて……

ホント間抜けで、情けないことぐらい自分が一番よくわかっているんだけど……。





サトシの家を出て、帰宅すると、リビングから笑い声が聞こえた。

ユウが来ているのは、玄関に置いてあった靴ですぐにわかった。


「お。おかえりー」


リビングに入ったオレの方を振り返り、そう挨拶してきたのは……


久しぶりに会う

兄貴だった……。

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