*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
彼は黒板消しを差し出しながら、わたしをじっと見ている。

頬がカッと熱くなる。

軽い眩暈に襲われ、頭はクラクラ……目の前はチカチカする。


彼の声を聞いた瞬間、わたし達を包む空間の時間が止まったような気がした。

校内のざわめきも、風がゆする木の葉の音も、わたしの耳には何も入ってこなかった。

ただ、彼の声だけがクリアに響いて耳よりももっと深い部分を刺激した。



「は……い……。す……すみませんっ」


ペコリと頭を下げてそう言うのが精一杯だった。


もうもうもう!

わたしのバカ!


耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかった。

顔から火が出そうって、こういうことを言うんだ。


黒板消しを落としただけでも相当恥ずかしいというか、あり得ない出来事なのに、まさか、それをコロちゃんに拾ってもらうなんて。

もぉ……。

何やってんだよ、わたし。





「はい。気、つけや。粉まみれになるとこやった」


「え……」
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