*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
エミコが立ち去った後も、しばらくその場から動けなかった。


わかんない……。

サトシ君ってよくわかんない。


最近やたらとかまってくる。

学校ではもちろん、メールや電話もしょっちゅうくれる。

放課後お茶しにいったり、休みの日に一緒に出かけたこともある。


旅のお土産のグラスは、わたしだけにくれたってことも後から知った。


だけど、サトシ君は何も言わない。


『好き』とか

『付き合って』とか

そんな言葉を。


だから、彼の本心がわからなくて、いつも戸惑ってしまう。


サトシ君の存在がわたしの中で大きくなってきているような気はする。

だけど、これが恋なのかと言われたら違うような。

だって、わたしは今でも……。


わたしはその考えをそっと胸にしまった。

ダメ。

もういい加減、忘れなきゃ。


ひょっとして……。

いくら想っても届かないシィ君への気持ち。

その寂しさを埋めるために、サトシ君に甘えてるのかな?


サトシ君が何も言わないのを良いことに。


ほんとは、彼が何も言い出さないことにどこかホッとしてるんじゃないの?


もしも、何か言われたら、今度こそ変われる?



もしも言われたら……



わたしはどうするんだろう。

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