*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
そうおどけて言うサトシをマジマジと見つめた。

こいつはホントに変わった。

髪を切ったのも、最近女っ気が全くなくなったのも、タバコを吸わなくなったのも……多分、彼女のせいだ。

サトシなりに、ケジメみたいなもんをつけたかったんだろう。

それにしても……。


「お前にしたら、えらく手こずってるやん?」


そうだ。

いつもは女なんかもっと簡単に口説き落としてるのに……。


「あの子はな……。ゆっくりでええねん。オレは今、ゆっくり愛を育んでんねん」


こういうのをとろけそうな笑顔っていうんだろうか……。

サトシはうれしさと恥ずかしさの交じり合ったような顔でそう言った。



サトシの言いたいことは、なんとなくわかる。

なんだろう……彼女独特の空気感。

彼女の周りはなぜか、そこだけゆっくりと時間が流れているような感じがする。

そばに居るだけで居心地が良くて、ずっとこのままでいたい気分になるんだ。

だけどこっちが焦って追い求めたら、するりとどこかに逃げて行ってしまうんじゃないかって、そんな気にさせる。



「シィ……? オレ、ほんまにあの子、もらっていい?」


「は? 何やねん。ちぃちゃんは別にオレのもんちゃうし。っつか、それを言うなら、ケンジに聞いた方がええんちゃう? あいつ、ちぃちゃんの保護者かなんかのつもりやで」


冗談みたいに笑い飛ばした。

なのに、サトシは急に真顔になって、オレをじっと見つめた。


「ほんまにええんか?」

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