*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「うちなぁ……いらん金が山ほどあんねん」


「え……」


「オレのオヤジって、政治家やねん。あ……オヤジっつても認知もしてもらってへんけど」


初めて聞いた。

サトシ君のお父さんの話。

そんな事情があったのか……。


「多分、ちぃちゃんも名前聞いたら知ってるぐらい大物やで。うちのオカン、オレを身ごもった時に、手切れ金として大金つまれたらしいわ」


「そんな……」


「最低やろ? 偉そうに教育問題がどうとか演説してるくせにな……。オレは金で解決されたんやで」


「サトシ君……」


「けど、オカン気ぃ強いから、その金には手ぇつけてへんねん。だから、代わりにオレが使ってる。アイツの金なんか、全部使いきったる」


サトシ君は悔しそうな顔でそう言った。



「……ちぃちゃん?」


気付いたら、わたしはサトシ君を抱きしめていた。




これが同情だってわかってるけど、そうせずにはいられなかった。

だって、サトシ君、今にも泣きそうだったんだもの……。

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