*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
誰ともなく、オレ達は走り出し、その場から去った。


「もー! やばいって!」


「お前が叫ぶからやろ!」


「つかありえへんって!」


オレ達はそれぞれ文句を言いながら走り続けた。


さっきの光景が頭に浮かんで、途中で笑いがこみ上げてくる。


窓の向こうに居た人物に、ただ呆然とした間抜けなオレ達。



「マジびびったぁ! ちぃちゃんのオヤジが出てくんねんもん」


ケンジのその言葉で、大爆笑。

オレ達がちぃちゃんだと思い込んでいた人影は、こともあろうに、彼女のお父さんのものだった。



オレ達はやみくもに走り続けた。

急に走ったせいなのか、笑いすぎたせいなのかわからないが、腹が痛くなってくる。

だけど、頬に当たる冷たい風は心地良くて、不思議なほど爽快感に包まれていた。


澄んだ空気のせいか、いつもより星がキレイに見える気がした。



なぁ。

こんな風にバカみたいなこと、これからの人生でいったいどれぐらいやるのかな。

大人になったオレらは、今のオレらを振り返って、「アホやなぁ」って嘲るのかな。

ただ笑いあって、何も考えずに風を切って走って……。



オレ……いつまでもこうしていたいよ。


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