*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
“男の子は 何でできてるの?”


ふとそんなフレーズが頭をよぎった。

確かマザーグースの一節だったよね。


ええと……カエルとカタツムリと……子犬のしっぽで出来てるんだっけ。



“女の子は 何でできてるの?”

お砂糖、スパイス、それから……“素敵なもの”でできている。


初めてその詩を見た時、すごく不思議な印象を受けた。

男の子って奇妙な物でできてるんだなって思って可笑しかった。



きっと男の子と女の子では出来ている成分が全然違うんだよ。

シィ君の寝顔を見ながらそう感じた。



ユカリちゃんの気持ち、ちょっとわかる気がする。


女の子の成分はそのほとんどが“恋”でできてるんじゃないかな。


好きな人ができたら、そのことで頭ん中がいっぱいになるの。

他は何もいらないぐらい。



だけど男の子はきっと違う。

自分の将来や目標とする物、趣味や……それからプライドだったり友情だったり。

恋はその大事な物の中の一つにすぎない。

そんな感じなんじゃないかな。


だから、女の子は時々不安になるんだ……。

わたしの事だけを考えて欲しいって……そんな風に欲張りになってしまう。


きっと、こういう気持ちは男の子にはわからない。

わたし達も男の子の気持ちはわからない。


だけど、わからないからどんどん惹かれて、知りたくなる。

そうしてみんな恋をするんだ。


「……ん……」


シィ君の体が少し動いて、胸の上から参考書が落ちた。


わたしはそれをしゃがみ込んで拾った。


シィ君はまだ目を覚まさない。

この際だから、じっくり観察しちゃお。

眠っているシィ君の顔を覗き込む。


一応眠る準備はしたのかな。

メガネをちゃんと外していた。

久しぶりだな、メガネを掛けていないシィ君の顔を見るのは。

< 379 / 417 >

この作品をシェア

pagetop