*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~

・優しさの意味

パタパタと走り去る彼女の後姿を、まだスッキリしない頭で見送った。


「キライか……」


ポツリとつぶやいた。

彼女の口から漏れたその言葉は、オレに思いのほかダメージを与えたようだった。


「ヤバい……痛い……」


胸が痛くて、苦しくて、シャツをギュッと握りこんだ。



夢を見ていたんだ。


白い空間で、優しい光に包まれた人が近づいてくる夢。


最初はユウだと思っていた。


だけど、近づくにつれてやがてその輪郭を捉えることができた。


それは、ちぃちゃんだった。


夢の中のオレは何も考えられなかった。

いつもオレを支配する余計な常識やモラルや綺麗事、全てが取っ払われていた。

そこにいるのは単なる一人の“男”であるオレだった。


オレは近づいてくる彼女に手を伸ばし引き寄せ、本能のままに抱きしめた。

まばゆい光に包まれた彼女は神々しいまでにキレイで、それはまるで天使を犯しているような錯覚にすらなった。




目が覚めると、信じられない光景がそこにあった。


今夢の中で抱いていた彼女がすぐそばにいた。

夢と現実の境にいるような感覚。

気付いたら、彼女の唇に触れていた。


それは、想像していたよりもずっと柔らかくて甘くて

オレの心の深い部分をとろけさせるほど魅力的だった。


ずっと確かめたかったんだ。

彼女の存在を。


オレの中にあった彼女への想い、その不確かな存在を彼女に触れて、彼女を感じて、この抑えきれない欲望の意味を知りたかった。



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