*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
シィ君は

「……ほんまに、どんくさいなぁ」

なんて言いながら、それを拾う。


ゆっくりと体を起こすシィ君。


その表情が変わった。

目の焦点が合っていないような、不思議そうな顔をしている。

手にしたスケッチブックを眺め……それから中庭に目をやって、そして再びわたしを見た。


「オレ……」


シィ君は何か大事なことを話すかのように、ゆっくりと口を開いた。


「入学してすぐの頃……ここで誰かとぶつかって、スケッチブック拾ってんけど……」


シィ君……。

目の縁に涙が溢れてくるのを感じた。


「あれ…って……ちぃちゃんやったんか?」

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