*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
その瞬間、あふれ出た涙がポロポロとこぼれた。


言葉は何も出てこなかった。

ただ、うんうんと首を縦に振って頷いた。


「そうやったんか……。思い出して良かったな」


シィ君は小さな声で噛み締めるように、そうつぶやいた。


もう、充分だよ。


わたしの片思い。

シィ君があんな小さな出会いをちゃんと覚えていてくれた。


それだけでうれしい。


あれが全ての始まりだったの……。

きっとあの時からわたしは彼に恋してた。

それは叶うことのない恋だったけど。

あの日この場所でシィ君に出会ったことには、ちゃんと意味があったんだ。
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