*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「あ。ううん。なんでもないねん。ナオなら合格したよ」


その瞬間、ホッとして力が抜けたような気分だった。


良かった……。

シィ君、合格したんだ。

ほんとに良かったな……。


ふとユカリちゃんの視線に気付き顔をあげると、彼女は優しい眼差しでわたしを見つめていた。


「ユカリ!」


その時、ユカリちゃんの背後から彼女の友達らしい子が声をかけてきた。


「ちぃちゃん、ごめん。わたし行かな。また今度ゆっくり話そう」


そう言って手を振り、友達の元へと歩き出した。


でもすぐに足を止めると、またわたしの方へ振り返り、そしていつもの太陽みたいな笑顔でこう言った。


「ちぃちゃんは、いつも人のことばっかり考えすぎ。たまにはワガママになってもいいねんで」


「ユカリちゃん……?」


どうして突然そんなことを言い出すのか、わけがわからなかった。


でも、ユカリちゃんはまた友達に呼ばれて、今度こそ振り返らずに行ってしまった。
< 402 / 417 >

この作品をシェア

pagetop