*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「蛍……見に行かなあかんな。なかなか行く機会が作れへんかったから」
そう言ってニッコリと微笑む。
「シィ君……」
覚えてくれてたんだ……。
あんな小さな約束を。
気が付くとわたしはまた涙ぐんでいた。
「あのさぁ……。いい加減『シィ君』って呼ぶのやめようや。結婚したら、千春も“香椎”になるんやで」
「そか。じゃ、なんて呼べばいいん?」
「下の名前でええやん」
「ナ……」
言いかけて言葉につまる。
『ナオ』?
『ナオ君』?
それとも『ナオミチ』がいいのかなぁ……。
てゆか、違和感があるよー。
だって、出会ってから約10年間、ずっと『シィ君』て呼んでるんだもん。
言葉が出てこず真っ赤な顔してパクパクと口を動かすことしかできない。
シィ君は、はぁ……ってため息をつくと、わたしの耳にキスをして、そのまま耳元で囁いた。
「しゃーないなぁ……。も、いい。ゆっくりでええわ。オマエはゆっくりでええねん」
そして
「絶対、幸せにする」
そう言って初めて会った頃と変わらない、わたしの大好きな笑顔で微笑んでくれた。
[完]
そう言ってニッコリと微笑む。
「シィ君……」
覚えてくれてたんだ……。
あんな小さな約束を。
気が付くとわたしはまた涙ぐんでいた。
「あのさぁ……。いい加減『シィ君』って呼ぶのやめようや。結婚したら、千春も“香椎”になるんやで」
「そか。じゃ、なんて呼べばいいん?」
「下の名前でええやん」
「ナ……」
言いかけて言葉につまる。
『ナオ』?
『ナオ君』?
それとも『ナオミチ』がいいのかなぁ……。
てゆか、違和感があるよー。
だって、出会ってから約10年間、ずっと『シィ君』て呼んでるんだもん。
言葉が出てこず真っ赤な顔してパクパクと口を動かすことしかできない。
シィ君は、はぁ……ってため息をつくと、わたしの耳にキスをして、そのまま耳元で囁いた。
「しゃーないなぁ……。も、いい。ゆっくりでええわ。オマエはゆっくりでええねん」
そして
「絶対、幸せにする」
そう言って初めて会った頃と変わらない、わたしの大好きな笑顔で微笑んでくれた。
[完]