*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
しばらく呆然として……

それから、まるで急にパズルがはまるかのように、最近の周囲の出来事が理解できてきた。


いつも食堂で集まるメンバーは、オレら4人と、ユウとユウが連れてきた女友達3人だった。

さっきヤマジの口から出た、アサミとカナコってのはその中のふたり。



彼女達はいつも4人でいたはずなのに、3学期に入った頃からなぜかユウとカナコしか来なくなった。

そして、来なくなったうちの一人が、アサミ。


なるほどね。


アサミとその彼氏とユウは、いわゆる三角関係になったんだろう。

それが原因で、女4人のグループが分裂。



「なぁ、ヤマジ。女って、男が絡んだら友情とか一瞬で消えるんかな? なんか、すげーな。怖いっちゅうか」


「うーん。ってゆか、みんな必死なんじゃない? ほんとに欲しけりゃ、遠慮なんかしないし。シィも、いい加減、覚悟決めたら?」



「ヤマジ君、そのセリフ怖い……」



缶の中ですでにぬるくなってしまっていたコーヒーを口にした。

いつもより苦く感じたその液体は、一瞬喉に絡んで動かなくなりそうになり、意識してゴクリと飲み込まなければならなかった。


――オレは勇気がないだけなのかな?


どうして、一番強く想ってる胸の内は、いつもいつも、この喉のあたりにつかえて、簡単には言葉になって出てくれないんだろう。


ユウ、お前はどこへ行こうとしてる?

お前とお前の親友を天秤にかけるような男なんかがいいのか?


オレは多分……そんなやつなんかより、お前のことを……。



缶を握っている手に力を込めた。


「ヤマジぃ。オレ……決めたわ」


今にも雪が降り出しそうなその日、オレはユウに気持ちを伝えようと決意した。


< 45 / 417 >

この作品をシェア

pagetop