*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「卵焼きゲッチュ~!」


見上げると、すでに卵焼きを口の中に放り込んだ声の主は、わたしを見てニッコリ微笑んでいる。

そして彼はそのまま、わたしの隣の席に座った。


――あ……ダメだ。

ほんの少し心拍数と体温が上がるのを感じた。

彼の居る左側の腕が敏感に反応して緊張する。



――シィ君。

香椎直道君。

わたしが“コロちゃん”ってあだ名で呼んでいた彼は、そういう名前だった。


「シィ、遅かったなー? 何してたん?」


ケンジ君が、さっきわたしに質問したようなことをシィ君にも聞いた。


「エッちゃんの手伝い。……んで、これ戦利品。なんで、いっつも焼きそばパンやねん」


シィ君は眉間に皺を寄せながら、パンの袋を開けている。


思わず吹きだしそうになった。

そういえば、小林先生の手伝いをした後は、シィ君のお昼ご飯は必ず焼きそばパンだ。



「シィ君は、エッちゃんのお気に入りやもんな」


サトシ君がからかった。


「やめてくれ。オマエが言うとなんか卑猥に聞こえる」


このシィ君のセリフから、話は怪しい方向へと進んだ。

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