*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「いいなぁ……」


教室へ戻る途中、無意識にそう呟いていた。


「ん? どうしたん?」


ユカリちゃんが不思議そうな顔してわたしのことを覗き込む。


「えっ。いや……」


慌てて、言葉を探す。


「えとっ……幼馴染! わたし、そういうのに憧れるねん。ほら、少女漫画の定番やん? わたしも男の子の幼馴染とかいたら、ここまで苦手にはならんかったと思うねんなぁ。友達すらいないし……」


「えっ?」


ユカリちゃんがキョトンとした顔をしてわたしを見る。


「ちぃちゃん。そんなん言ったら、みんな泣くで」


「へ?」


「みんなやん! ナオもサトシもケンジもヤマジも! あの子ら、ちぃちゃんのこと友達やと思ってるよ?」


「え……。ええええええ! 友達? わたし、みんなと友達なん?」


「もー。何言ってんのよぉ。毎日、一緒にご飯食べてるやん。友達に決まってるやろ!」


「そ……そうか……。友達か。友達……。うわぁ……なんかうれしいかも……」


ユカリちゃんはニッコリ微笑むと、わたしの頭を『ヨシヨシ』って感じで撫でてくれた。


あ……。

なんか、ほんとにうれしい。


誰に話してもバカにされるようなことかもしれない。

ホントに些細なこと。


初めてできた男の子の友達。

その存在がたまらなく嬉しかったんだ。

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