*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「こるぁ。サボんな」


その人はニヤリと悪戯っぽい目で微笑むと、ケンジ君から奪ったチョコをさっさと口に入れてしまった。




「……なんちゃって」




――『なんちゃって』って。

この人って普段大人ぶってるのに、こういうとこ子供なんだよねぇ。


「あああああ! シィ! オレのチョコやで! 返せ!」


「よっこらせ」


シィ君はケンジ君を無視して、窓から美術室に入ってきた。


「オレも、オレも!」


続いてケンジ君も入ってくる。


「練習いいの?」


わたしの問いかけなど全然気にしないような感じで、シィ君は伸びをしながら「今、休憩中やもん」と答えた。


2人はサッカー部。

サッカー部の練習場所が美術室の目の前だということに気付いたのは、わりと最近のこと。

今まで練習風景なんかまともに見たことがなかったから、シィ君がサッカー部だということも知らなかったんだ。

今ではこうして、2人とも度々わたしのお菓子を目当てに美術室にやってくる。


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