*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「ええよなぁ。美術部。お菓子もジュースもあるし。癒されるわー」


ケンジ君はさっきと同じチョコを探しているのか、缶の中を物色中だ。


たしかに……。

こういうとこ、美術部はホント自由だ。

準備室には、電子レンジ、ミニ冷蔵庫、ポットなんかも置いてあるので、わたし達は勝手にコーヒーや紅茶を入れたりして、部活の合間に自由に飲み食いしている。


これって、文科系クラブの特権だね。


「あ、でもしばらく来られへんなぁ。もうすぐ中間テストやし」


ケンジ君はやっと見つけたチョコを口に入れながらそう言った。


もうすぐ中間テストが始まる。

そして、テスト前1週間は部活動が禁止になる。

つまりは勉強に集中しろってことだ。



「あー。嫌やなぁ……。なぁ、ちぃちゃん、勉強してる?」


ケンジ君が頭を掻きながら、本当に嫌そうに尋ねる。


「ううん。全然。わたし、切羽つまらなやらへんねん」


「オレも! もちろん、一夜漬けやで。ちぃちゃん、一緒やなぁ。一緒、一緒」


チョコを頬張りながら、嬉しそうにはしゃぐケンジ君。


「フッ……。一緒ちゃうやろ? ちぃちゃんは、別に一夜漬けなんて言ってないで。勝手に同類にすんな」


シィ君はさっきから何が珍しいのか、部屋に置かれた絵や画材道具をしきりに眺めたり手に取ったりしている。


「あ……嫌味ぃ~。シィはええよなぁ。いっつも学年トップやもん」


え?

学年トップ?

シィ君が?

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