俺様副社長に捕まりました。

「えっ？俺と桃の知ってる人？・・・・そうなると・・・会社の人間？」
「うん」
水沢さんは少し考えるように腕を組みながら私と同じように思い切りもたれかかった。
「俺も桃も知ってる人間となると・・・・役員か・」
流石察しがいい。私は敢えて黙っていた
「桐山専務のとこは・・・男だったよな・・・で園村常務は・・・・あっ」
私と裕人の事を思い出したのかバツの悪そうな声を上げた
「いいでよよ～水沢さんのお陰でもうすっかり忘れてますから・・・」

「・・・・ってことは・・・もしかして・・・安藤専務？」
私は黙って頷いた。
それに反応するかのように水沢さんは驚いた様子で私を見た。

「世間狭すぎだろ～」
・・・だよね・・・
「私もそう思いましたよ。でもね～私の知ってる安藤専務って役員でありながら社員からの
人望も厚くて・・・娘さんと絶縁状態だなんて・・・そんな人には思えないというか
・・・・でも実際はそうで・・・って頭がごちゃごちゃになって・・・・」
「俺もそう思うよ。俺・・・あの人にはいろいろと仕事の事を教わったからな～」
しばらく無言が続いた。
「輝くんが・・・・」
「輝くん？」
私は水沢さんに今思っていることを全部吐き出した。
「あっ・・・里沙さんのお子さんで今保育園の年中さんなんです。凄く元気でいい子なんです。
あの子自分におじいちゃんとおばあちゃんがいること・・・・きっと知らないと思うんです。
私小さい頃からおじいちゃんとおばあちゃんに可愛がってもらって…
安藤専務って絶対いいおじいちゃんになると思うんです。里沙さんと専務が和解すれば
今よりもっと楽になるはずなんです。
子育てって・・・大変で・・・周りに頼れる人がいるのといないのとでは全然違うんです。
家政婦がお手伝いするといっても限度があります。
しかも・・・輝くんの下には双子ちゃんもいて・・・・」

水沢さんが私の肩をぐっと抱き寄せた。
「桃は井上さん家族が好きなんだな・・・」
私は大きく頷いた・
「私の理想です。でも足りないものもあって・・・・」
「それが親子の確執・・・・か・・・俺にできることがあるなら協力するよ」
「ありがとうございます・・・・」
水沢さんの肩にもたれかかった。

私はその肩にもたれながらあることを考えていた。