俺様副社長に捕まりました。
「水沢さん?・・・・一体どこへー」
行くの?そう聞きたかったのだが・・・・
車がゆっくりと停車した。そして運転手さんは車から降りるとさっと後ろに回り
後部座席のドアを開けた。
すると水沢さんの目がパッと開き、颯爽と車から降りた。
無駄のない動きに一瞬目を奪われていると
「君も降りるの」
急かすような口調に目を奪われた自分が憎いと思えた。
大体さっきからなんなのよ。
私の質問には答えようとしないくせに私には厳しくない?
だがそんな思いは車を降りて一瞬で消えた。

「え?なんで?ホテルなの?」
以前無理やり同行させられたパーティー会場と同じホテルだった。
だがまたしても水沢さんは私の質問になど答えようとせず
私の手を握ると歩き出した。
「ちょ・・ちょっと・・・ホテルって・・・何かあるの?ねえ~」
まるでだだをこねる子供のようだとわかっているが教えてくれないのだから
仕方がない。

そしてホテルの中に入るとロビーを抜け、フロントとは逆方向へと歩いていく。
そこは幾つかのショップが並んでいるのだが
高級感半端なく、私のような家政婦には到底無理というか問題外と言ったほうが
合っていた。
だが水沢さんはその中の特に問題外なお店の中に入ろうとしていた。
「ちょ・・ちょっと・・・ここに・・・入るの?」
「そうだけど?」
当たり前の様な言い方に生活レベルの差をあからさまに感じた。
入口の前でしばし固まっていると、早く入って来いと急かすように手招きされた。

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