俺様副社長に捕まりました。
不安の中私はいつもの様に家事をこなし
夕食を作らず緊張の面持ちで待っていた。
こんなに落ち着かないのは初仕事の前日の以来だった。
ただこの落ち着かない理由が何なのか私自身よくわかってなかった。

18時を少し過ぎたころ玄関のドアの開く音がした。
水沢さんが帰ってきた。
初めてこの家でしかも二人きりで会う私の緊張は相当なもので
足と腕が同時に動いているのじゃないかというほど動きはぎこちない。
玄関に向かうと水沢さんはちょうど靴を脱いでいるところだった。
働いていたときも思っていたが本当にスーツが良く似合っている。
ヘアースタイルも実年齢よりも若く見えきちんとセットされ、それは朝から晩まで崩れること
なかった。
レンタル屋でよく会うもうひとりの水沢さんとは比べ物にならない。
だがよく見ると背格好はよく似ている。メガネをかけていないけど
なんだかこの顔にメガネをかけたら似ているかも?と思ったが
こんなに身なりの良い男とあのボサボサの水沢が同一人物だなんてことはないと・・・

「お・・おかえりなさいませ」
「ただいま」
素っ気ない挨拶は初顔合わせの時の顔ではなくどちらかというと
会社にいる時の副社長の顔だった。
この人と交換日記の様な事をしていたなんて想像出来なかった。
だが気持ちを切り替え水沢さんの手荷物を受け取ろうと
「お荷物を・・・」というと水沢さんは「重いからいい」と一言だけ言うと私より先にリビングへ向かった。
たしかに水沢さんは大きな荷物を抱えていた。
一体どうしたんだろう。
そう思うと着替えもせずに水沢さんは一人掛けのソファーに座るとリビング入口に立っている私に向かって
ここに座りなさい。横の3人がけソファーを指さした。
私はハイと返事をすると小さな声で失礼しますと声をかけ座った。
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