俺様副社長に捕まりました。
「いいだろ?」
水沢さんがふっと笑った。
「ええ・・・とても素敵です」
「オヤジが仏像とか寺を見るのが趣味でよくここを利用してたんだ。」
掴まれてた腕がすっと緩むと水沢さんはジャケットを脱いだ。
私はそのジャケットを受け取るとすぐにハンガーにかけた・・・情けないが
完全に職業病だ・・・
水沢さんは一人がけのチェアーに座ると私に君も座れというので
向かいの椅子に座った。
水沢さんか頬ずえをつきながら懐かしむような優しい目で石庭を見ていた。

「昔・・・小学生の頃、初めてオヤジとここに来たときこの砂紋をみて自分も
やってみたいって運動靴のまま庭に入ったらオヤジカンカンに怒って・・・・
君の座っている椅子の横の床に正座させられたんだ。
熟練した職人さんが魂を込めて描いた作品を
壊すんじゃないってね・・・・」
初めてだった。
水沢さんが自分のことを話すなんて・・・・
それにさっきまでのトゲトゲしさが全くなかった。そして私に視線を向けると
「いつも君には世話になってるから・・・・今日はゆっくりしてもらいたくて連れてきたんだ。」
「え?」
ちょ・・・ちょっとなに?
急に優しくなるとか反則じゃないのよ!
石庭みて癒されちゃったから優しくなっちゃった?
私はコロコロ変わる彼の態度にどうしたらいいのかわからなくなってきた。

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