俺様副社長に捕まりました。
しばらくすると裕人が秘書室に現れた。
これから話す内容がわかってるだけに笑顔など作れるわけなかった。
裕人は私と距離を置くように立ったままいきなり頭を下げた。
「ごめん」
「・・・・・」
返す言葉などなかった。
園村常務から真実を聞いてしまっているのだから
「常務の秘書になって娘の友香さんと会う機会が増えたんだ。そしたら
常務から友香さんが俺のことを気に入って結婚を前提に付き合いたいと言っているが
どうだって言われたんだ。もちろん俺は断った。俺には桃がいたから
でも彼女、わがままなお嬢様だと思ったら意外と家庭的で・・・
そのうち徐々にー」
「もういい!」
もうこれ以上聞きたくななかった。
私が何か言ったところで話が覆すことはないだろうし
泣いてすがっても自分が惨めになるだけ

文句の一つ言う気力ももう私にはなかった。
私は上着とカバンを掴むように取ると無言で彼の横を通り過ぎた。

彼との3年間はさようならも言わずに終わった。
< 6 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop