俺様副社長に捕まりました。
私は所長に彼との出会いを話した。
もちろんそれはレンタル屋での水沢さんの事を
依頼主である事は知らず、思いを寄せた事を・・・
話し終えると
黙って聞いていた所長がしかたないといった表情で頷いた。
「わかったわ・・・でもあなたみたいな人材がいなくなるのは本当に残念なのよ。
だけど規約は規約だからここで特例だしちゃうとね・・・・ところで水沢さんはそのことを・・・」
「知りません。それで・・・・所長にお願いがあります」

もし自分で・・・自分の口から彼に家政婦をやめるって言ったら
きっと止められる。
そうなったらきっと気持ちが揺らいでしまう。
元々、私たちは住む世界が違う。
まだ好きで好きでたまらないし本当はこんな選択したくないけど・・・
この恋がうまくいくわけがないんだ。
私の好きになった人がボサボサ頭のおしゃれにてんで無頓着な肩書きのない
水沢尊だったらどんなによかったか・・・・

「所長から水沢さんに私が担当を外れて会社を辞めることを伝えてくれませんか?」

所長は席を立つと自分のデスクに座り
電話をかけた。
淡々と水沢さんに話をしていたが最後の所長の言葉に胸が締め付けられる思いだった

『なぜ彼女が辞めたかって?それはあなたがよく知っているんじゃないの?』
彼が悪いんじゃない。
私が・・・ちゃんと状況を把握して目先のことだけ考えていなければこういう結果には
ならなかったのかも知れない。
それができなかったのはやっぱり自分に甘かった私自身に責任がある。
所長の言葉は全て私に向けられた言葉と言っておかしくかなった。

受話器を置いた所長は両手で顔を覆うとその手を離した
「これでいいのね・・・・」
竹原さんがフッとため息をつきながら私を見上げた。
私は頭を下げた。
「ありがとうございます」
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