君と過ごした1ヶ月
『うるさいわね、バカ遥!』
そう言って少し強めに肩を叩く。
「っ………」
すると口元に手を当てる遥。
身体をくの字に折ってくるしそうにしている。
『え、遥っ!?』
慌てて立ち上がって看護婦さんを呼びに行こうとしたときだ。
パシッと乾いた音がして私の腕を遥の手が掴んだ。
「バーカ、演技だっての。勝手に慌ててんなよな」
『……なによ、それー!』
本当に心配したんだから。
意地悪な顔で笑う遥を見て一気に身体の力が抜け椅子にドサリと座った瞬間だった。
トントンと部屋にノック音が響きドアから看護婦さんが入ってきた。
「夏希ちゃん?今から遥くん検査の時間だから席外してもらってもいい?」
『あ、すみませんっ。失礼します』
慌てて立ち上がってドアのところで振り返る。
いつもより看護婦さんが来るの早いな、なんて考えながら
『遥っ、また明日ね!』
そう言ってニッと笑ってみせると遥も笑って手を振りかえした。
私はこのときが一番好きだ。
遥が嬉しそうに笑うあの笑顔が。
でもこの日の遥の顔色はいつもの白い顔がさらに白く、青白く見えた。
それに遥の手は折れそうなぐらい細くて
病室をでて遥が掴んだ左腕を見つめていた。