死にに行く。ナイフと馬人間と
俺は、恐怖もあったがそれよりもここから或いはこの場面から早く逃げたかった。
面倒だったのだ。
初めての海外での仕事は金銭的には良かったが精神的には疲れたし暑さが思考を止めようとしていた。
その後に、アジアや欧米にもトンネルの仕事で行くが何処でもやはり疲れた。
疲れてる僕は何故か急にカップヌードルを食べたくなったが、そういう自分自身が笑えた。
日本の物は、こちらでも手に入ったし送っても来ていたが、そう言えば最近カップヌードルを食べてないなと無性に食べたくなった。
その時怒ってるタイ人の手からナイフが出てきた。
腰のベルトに差していたのだろう粗末なナイフだったが、きちんと研がれていて不気味だった。
錆びた部分と研がれた部分の差が不気味に写った。
ナイフと言うより小さな鉈と言った方が近いのかも知れない。
俺は、暑さでボーッとなっていた気持ちがそれを見た瞬間に切り替わった。
ただの面倒から身の危険に変わったからだろう。
実際に喧嘩で日本人が、タイ人に刺されるのを間近で見た事があった。
些細な事からそれは起こり日本人は、腹を刺されたが直ぐに病院に行った為に怪我ですんだのだ。