エクセル・インフェルノ
それから何度も夏生と二人でギリギリでケルベロスの攻撃を交わしていたが、それが限界だった。
交わすのが精一杯で攻撃など出来る隙などなく徐々に俺と夏生に疲労だけが蓄積されていた。
「埒あかねぇぞこれ……はぁ、はぁ。帷!何か策はねぇのか!」
「無い!」
「簡単に言うなよなぁ……って!帷!」
夏生が叫んだ理由は直ぐに解った。
ケルベロスの攻撃が俺に向けれたが俺は交わす事が出来たが、その攻撃だけは交わす訳には行かなかったのだ。
何故なら俺の背後には女の子がおびえ震え固まっていたからだ。
(俺が交わしても、この子に……ここまでか)
諦めた俺は何が何でも、その子を助ける為に更に後ろに完全にケルベロスの攻撃が当たらない場所まで力一杯に突き飛ばした。
「ど、どうして……」
自分を犠牲にして助けようとした俺に向かい女の子は涙を流しながら、そう言った。
俺は助けられた事に安堵し、そして親指を立て女の子に最後まで笑って見せた。
「帷どけっ!」
だが覚悟した俺の耳に夏生の声が近くで聞こえ慌て振り向くと……
「ぐっ!」
振り向いたと同時に俺は夏生に飛び蹴りされ吹き飛んでいたが飛ばされながら夏生を見 て叫んだ。
「夏生!」
「あばよ帷!」
俺に向かい親指を立て笑った夏生の頭からから下半身をケルベロスの爪が引き裂いた。
「な、夏生!何でだよ!ふざけんな!」
俺は吹き飛び地に倒れたと同時にすぐ起き上がり、まだ消えていない夏生の元に駆け寄り抱き上げた。
「すまん帷……つい身体動いちまった。本当は帷を突き飛ばして、その子に抱き付く予定だったんだが……失敗したぜ……はは……うぐっ!」
「夏生!」
「わりぃな帷……すまんが俺の代わりに……必ずあの変態野郎殴り飛ばしてくれ……た……のん……だ……ぞ……」
そう力なく言った夏生の身体が粒子となり散々になり消えた。
「ふざけんなよ夏生!……ちくしょう!馬鹿野郎が!」
俺は夏生を失い完全に戦意を喪失した。