エクセル・インフェルノ
消えた夏生の姿を魂が抜け落ちたかの様な顔で見詰めている俺の耳元にケルベロスの咆哮が飛び込んで来た。
「ガルゥゥゥゥ!!」
「うるせぇよ……お前」
「ガルゥゥゥゥ!!」
「うるせぇって言ってんだよ!」
「ガァァァァ!!」
「黙れって言ってんだよ!!」
既に目の前にはケルベロスの大きな右脚が鋭い爪を伸ばし迫っていたが怒りが項をそうしたのか、身体勝手に動き素早く横に転がり交わしていた。
そして立ち上がり夏生の命を奪ったケルベロスを睨み付けた俺は、我を忘れ勝てる訳もないケルベロス相手に突進した。
「ぶっ殺してやる!夏生を……夏生を返しやがれぇ!うぉぉぉぉ!!」
素早くケルベロスの足下に潜り、ありったけの力の込め蹴りを放った。
「チッ!」
蹴った瞬間に全然ケルベロスには効かない事を理解した。
蹴った俺の脚は逆に弾かれて体勢が崩れたからだ。
「くそぉぉぉぉ!!」
ケルベロスのHPが一つも減っていない事実を確認した俺は諦め絶望し膝をついた。
「夏生……ごめん……仇すら討てない……俺も今、そっちに行くよ夏生……」
最早、俺の戦う意思は完全に消え失せた。
「ガァァァァ!!」
膝をつき涙を流して方針状態になっている俺に向かい、容赦なくケルベロスは大きな口を開け噛み付こうとしていた。
(くっ……そ)
そして俺は死を受け入れた……
「グガァァァァ!!」
刹那。ケルベロスが突然、苦しむ様な雄叫びを上げた為、俺は何が起きたのかと頭を上げ見るとーー
「危なかったぁ。少年、無事かな?立てる?」
目の前には、噛み付こうとしたケルベロスの右側の首を細長い剣で斬り落とし、俺に優しく微笑み手を差し伸べている見知らぬ女の人が立っていた。