エクセル・インフェルノ
「あのスキャナーって、ひょっとしたら健康チェックの他に俺達の顔や身体の特徴もスキャンしてたのかもしれないな。だとすれば……アバターとか無く、このまんまかもしれないな」
予想のつく範囲の事を夏生に伝えると俺と同じ様に顎に手を置き何やら夏生も考えているみたいだった。
「なるほど。でもよオンラインゲームで本当の顔を知られたら不味くないか?結構、犯罪だってあるしよ?」
言われてみれば夏生の言う通りだった。だが逆を言えば顔が解らないから犯罪を起こそうと思う人も多い訳で、むしろ顔を知られた方が犯罪しにくいのではなかろうかと、ふと思ったりした。
「とにかく普通じゃないからな、このゲーム。なんて言っても人類初のVRMMOだし」
「そりゃそうだ。こんな事が本当に出来る時代が来たんだからな……見ろよ、この世界!未だに俺は信じられないぜ帷!」
興奮気味に言った夏生と共に、そのあり得ない世界を二人で眺めた……
山や樹々に囲まれ遠くには澄んで光る海や湖。
更には現実世界には見た事が無い独特の建物が連なり、ここがゲームの世界だとか現実世界だとか最早どうでも良いとさえ思わされる程の素晴らしく美しい光景が辺り一面一杯に広がっていた。
「これが本当に仮想世界なのか……」
壮大過ぎる景色に気圧され思わず、そう呟いてしまった。
「信じられないよな?顔や身体だって現実世界のまんまだし。それに風だって偽物なんだろうけど吹いてるのを肌で感じる事も出来るし……現実世界と何が違うのか何て、こうしてると解らないな?」
この世界を嬉しそうに眺めながら、そう言って微笑んだ夏生。
「あぁ。本当だな……」
そんな事を言って嬉しそうに微笑む親友の横顔を見て俺も微笑み返し、そう答えた。