最後の恋にしたいから
私が彼を好きだと思っていた気持ち、そして彼も私を好きだと思っていた信頼、それは見事に崩れ去った。

悲しみを超えて怒りさえ芽生える私に、裕子さんは眉を下げて必死に言ったのだった。

「ごめんなさい。私が悪いんです。奈々子さんがいるって知って、寿人さんを受け入れました。だから、彼を責めないでください」

身を乗り出さんばかりにの彼女を、寿人は手で優しく制止している。

それが嬉しかったのか、裕子さんは少し頬を赤らめて、ぎこちない笑顔を浮かべた。

なんてバカバカしい光景だろう。

二人を見ていると、涙なんてとっくに乾いてしまった。

裕子さんの態度はまだしも、寿人はどうしてそれほどまでに彼女に優しいのだろう。

「二人はいつから、関係があったの?」

「二か月前。でも会社が同じだから、知り合ったのは一年前からになるけど」

私の質問に、寿人が素っ気なく答える。

裕子さんとの態度の違いや二人のやり取りに、心の中の何かが切れた。

「あっそう……」

それこそ、今までなら絶対に寿人の前で出さなかった自分。

『可愛くない』声に、彼は目を丸くした。
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