最後の恋にしたいから
「えっ？ 亡くなった……？」

あまりの衝撃に、言葉を繰り返すことしか出来ない。

去年の5月なら、課長の奥さんになりたいと書いていた日から、1ヶ月くらいで亡くなったことになる。

「でも、何でですか？ ハガキからは、二人が結婚を前提にしている感じでした。きっと幸せだったと思うのに……」

写真の沙希さんは、病気を抱えている様には見えなかったし……。

すると、安藤課長は一筋涙を流しながら、答えてくれたのだった。

「事故よ。祐真の赴任先のタイでね。些細なことで二人はケンカして、沙希は彼の部屋を飛び出した。雨の夜にね。そして、そのまま車にはねられて。傘も持たずに出て行った沙希の遺体は、気の毒なほど、ずぶ濡れだったみたいよ」

それだけ言うと課長は、その場に崩れ落ちて泣いたのだった。

声を押し殺すように、だけど涙が溢れている。

「そんなことが、あったんですか……」

そんな辛い過去が彼にあったなんて、まるで想像もしていなかった私は、しばらく放心状態だった。
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