最後の恋にしたいから
この優しさを疑いたくないけれど、沙希さんのことを聞かなければ、ずっと悶々とした気持ちのままになる。

最後の恋にしたいと言った彼の言葉を信じて、思い切って聞いた方がいいのかもしれない。

体をそっと離すと、課長を見上げるように見つめた。

「祐真さん、あのね……。私、見ちゃったの」

「見ちゃった?」

心配そうに覗き込む彼に、私は沙希さんのハガキや指輪を見たこと、そして安藤課長から聞いた話をしたのだった。

私の話を黙って聞いていた課長は、最初は驚きを隠せず目を丸くしていたけれど、最後には肩を落としてため息をついていた。

「安藤課長は、まだまだ吹っ切れてないみたいだったよ? それなのに祐真さんが、沙希さんのことを簡単に忘れられるの?」

誰かの身代わりで愛されるなんて、辛すぎてとても受け入れられない。

だから、課長の本当の気持ちを教えて欲しい。一縷の望みを託して聞くと、彼はゆっくりと口を開いたのだった。

「沙希のことを忘れるなんて出来ないよ」
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