最後の恋にしたいから
それは当たり前の返答だけれど、実際に口に出されると傷つく自分がいた。

やっぱり、課長は沙希さんを忘れてなんかいないのに、どうして私に告白なんてしたんだろう。

俯きかけた私の手を、彼は優しく包み込んだのだった。

「忘れられないのは、沙希に未練を残してるからじゃない。それは分かってもらえないのかな?」

顔を上げると課長の穏やかな笑みがあって、私を見つめていた。

「でも、好きだった気持ちも思い出すでしょ? まだ一年しか経っていないのに……」

「もう一年経ったんだ」

キッパリと口にした彼は、さらにゆっくりと続ける。

「彼女との時間を思い出すことも、供養だと思ってる。もちろん、自暴自棄になった時もあった。沙希を失って、未来はないと思った。でも……」

「でも?」

「あの夜、奈々子と出会って放っておけなくて、最初はそんな気持ちだったのが、だんだんときみを自分のものにしたいと思うようになったんだ」
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