最後の恋にしたいから
苦笑いをする祐真さんは、私の肩をそっと抱いて、優しく唇を重ねてきたのだった。

「焦ってるつもりはないんだけど、奈々子への気持ちを形にしようと考えたら、やっぱり結婚しかなかったんだよな」

その言葉が嬉しくて、彼の胸に顔を埋める。

「私も、祐真さんの過去も全部受け止めたいから……。だけど、本当に良かったの? 沙希さんとの思い出の品を、全部処分しちゃって」

私があのハガキや指輪を見つけてから、祐真さんはすぐに処分をしてしまった。

お寺で供養をした後、初めて沙希さんのお墓を訪れたのだけど、それも一回きり。

彼の希望で、それ以上は訪れていないのだった。

「いいんだよ。オレは前を向いていきたいんだ。それも、奈々子と……」

優しく見つめる祐真さんに、私は小さく頷いた。

「私も、同じ気持ち。祐真さんと、未来を見たいと思ってるから……」

祐真さんはそっと私の頬に触れ、愛おしそうに笑顔を浮かべる。

「愛してる奈々子。きみを絶対に離さない」

「うん。ありがとう祐真さん。私も愛してる……」
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