最後の恋にしたいから
「いやぁ……。それは……」

それを言われると辛い。

最近は、彼とはすれ違い気味で、結婚の『け』の字も出ていないのだ。

それだけじゃない。

ここ最近、電話もメールも激減し、会うことすら出来ていなかった。

「照れない、照れない。奈々子って可愛いもんねぇ。目がクリッとして、唇がちょっと厚くて……。それに小柄で守りたくなるようなタイプだもん。寿人(ひさと)くんも、ぞっこんだって」

普段から、よいしょのうまい彩乃のペースに、すっかり乗せられてしまっている。

彩乃こそ、スレンダーな美人で、オリエンタルな雰囲気は、まるでモデルみたいじゃない。

照れ臭さを隠しきれない私は、彼女に精一杯の睨みをきかせて、パソコンに向き直った。

彼女の言う通り、寿人が私をずっと好きでいてくれたらいいのに……。

だけど、今はそれに自信がない。

むしろ、不安なくらいだ。

今までは、どんなに仕事が忙しくても、絶対に会ってくれていたのに。

どうして、連絡すらくれないんだろう。

寿人に会いたいのに。
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