最後の恋にしたいから
気合を入れてるって、思われちゃったかな……。

ちょっと恥ずかしいけど、デートだからまあいいか。

「いろいろ行きたいところがあったんだよな? どこがいい?」

ハンドルを握る課長が、私に穏やかな笑みを浮かべる。

その表情に、胸がキュンと締め付けられた。

課長の笑顔は、心をときめかせる。

「じゃあ、海でいいですか? 実は……、寿人とよく行っていて、今年も行こうって約束してたんです」

そんな場所へ、課長に連れて行ってもらうのは気がひける。

だけど、心機一転何かをする気にも、心から気分転換する気にもなれない。

だったら、彼との思い出の場所へ行ってみたかった。

「そうなのか。いいよ、行こう。どこの海?」

課長は嫌な顔一つせず、車を走らせていった。
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