最後の恋にしたいから
ファミレスを指定してくるなんて珍しい。

デートでも、ほとんど行くことがなかったのに……。

不思議に思いながらも、言われた通り近くのファミレスへやって来た。

中心部にある店で、学生らしきグループや、仕事帰りの若い男女の客が特に多い。

店内に入るとすぐに、窓際のソファー席へ座っている寿人が見えた。

「ひさ……」

名前を呼ぼうとして、私は固まる。

そして足が止まり、鼓動が一気に速くなっていった。

なぜなら寿人の隣には、見たことのない女性が座っていたから。

ストレートの黒髪が、肩の上でキレイに整えられていて、ボブヘアがとても似合っている。

歳は少し下か。

淡いクリーム色のニットと、オフホワイトのスカートが見える。

20代前半くらいのその人は、キレイな二重の目で私を見た。

「もしかして、奈々子さん?」

彼女の言葉に、寿人もゆっくりと視線を向ける。

「あっ、来たか奈々子。こっちへ座れよ」

顎を上げて促されたのは、寿人の正面だった。

ゆっくりと向かい、座る前に尋ねてみる。

「あの、彼女はどなた?」

どうして、見ず知らずのこの人が、寿人の隣に座っているの?
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