最後の恋にしたいから
「あっ、実はお土産で貰ったブラジルのコーヒーなんです。名越課長にオススメしたんですが、安藤課長もいかがですか?」

まだ10パック近く残っているそれを差し出すと、安藤課長は目を輝かせた。

「え〜⁉︎ いいの? ありがとう! わぁ、嬉しい」

一つパックを手にした課長は、鼻歌を歌いながらカップを棚から取り出す。

その一部始終を見ていた名越課長が、顔を歪めながらチラリと私に目を向けた。

その意味は……、今週末に聞こう。

ようやく、約束の夏祭りの日がやって来るから。

それを考えると、今から胸がドキドキしてくる。

「それじゃあ、私は失礼します」

はやる気持ちを抑えて、カップを両手に持ち給湯室を出ることにした。

「うん。ありがとうね〜、古川さん」

ヒラヒラと手を振る安藤課長に会釈をし、チラッと名越課長にも目を向ける。

彼女の後ろに立つ課長は、小さく笑みを浮かべてくれた。

「ねえ、それはそうと祐真……」

安藤課長が話しかける声がするけど、私は微笑んでもらったことが嬉しくて、二人の会話を特に気にすることなく、オフィスへ足早に戻ったのだった。
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