最後の恋にしたいから
「えっ⁉︎ あ、あの……」

どうしてそんなことを聞くのだろうと、心の中でパニクっていると、見透かしたように彼女が言った。

「見ちゃったの。お祭りの日……。土曜日の夜、祐真と二人だったでしょ? しかも昨日は、彼のマンションに行かなかった?」

「み、見られてたんですか⁉︎」

思わず声を上げると、課長は少し顔を赤らめた。

「お祭りね、私も彼氏と行ったの。それに、私の彼のマンションって、祐真のところと近いから。たまたま昨日、古川さんが入っていくとこを見ちゃったのよね」

まさか、安藤課長に目撃されていたとは思ってもみなく、呆然としてしまった。

こんな風に呼び出されて、しかも課長はあまり嬉しそうではないのだから、不安が込み上げてくる。

「もしかして、安藤課長は反対ですか? 私たちが付き合うこと……」

聞かずにいられなかった言葉が出てくる。

すると、課長はゆっくり首を横に振ったのだった。

「私にそんな権利はないもの。ただ……。二人は本気なのよね?」

心配そうな口調に勘が働く。
きっとこれは……。

「もしかして、『沙希』さんのことですか?」

私の言葉に、安藤課長の動揺が見てとれた。
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