ぺピン
恭汰から目をそらすと、京香はカバンの中からスマートフォンを出した。

「電車がこないからタクシーで帰ろうかなって思ったんだ」

会話をするために話しかけた恭汰だったが、京香の目はスマートフォンの画面に向けられていた。

「結構人が並んでるし、帰るのは難しそうかな」

そう言った恭汰に、
「じゃあ、歩いて帰ればいいじゃないですか」

京香が言い返した。

視線はスマートフォンに向けられたままである。

「でもこの中で歩いて帰るのは難しいと言うか…」

「先輩、ストーカーはよくないですよ」

恭汰の言葉をさえぎるように、京香が言った。
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